舞台『+GOLD FISH』2019年5月10日(金)、東京・紀伊國屋ホールにて開幕した。演出家・西田大輔が手掛ける本格派ミステリ作品「ONLY SILVER FISH」シリーズの第二弾作品。初日直前にはゲネプロが行われ、W主演を務める清水葉月、松田凌ら豪華キャスト陣が熱演を繰り広げた。

2018年1月の舞台版、同11月に映画が公開された『ONLY SILVER FISH』。本作は過去を振り返ることができると言われる魚《オンリーシルバーフィッシュ》をめぐるもう一つのストーリーとなっている。2013年に音楽劇として初演され、今回の再演に際し“上質なミステリ”をテーマとした新たなワンシチュエーション会話劇として生まれ変わった。


ステージには、幻想的に浮かび上がる水槽のセット。舞台『ONLY SILVER FISH』にも使用された舞台装置が、物語が繰り広げられるイギリスの片田舎にある古い洋館へと観客をいざなう。

執事のパーカー川本成)に伴われ登場したのは、前作ではマシュー役として出演した松田。本作では休暇のために訪れた考古学者の青年・マーティズを演じる。やがて、とあるミステリ小説の謎を解いた招待客やその同伴者たちが続々と訪れ、《オンリーシルバーフィッシュ》の名前を思い思いに口にする。その本当の名前を知ることができる権利を得られるのは、たった一人。洋館の主からの指示に従って投票で決めることになり、男女12人の思惑が入り乱れた心理戦が展開される。

その最中、隣町から逃れた殺人犯が洋館内に紛れている可能性が浮上。秀でた洞察力を持つクラリス(清水葉月)は、マーティズとシンシア(樋口日奈)と協力し、他の招待客たちには悟られぬよう殺人犯の特定へと乗り出す。

クラリスの持つ重厚な存在感と発する言葉の説得力を見事に引き出す清水、時に奇矯な振る舞いを交えつつもどこか飄々としたマーティズを多彩に表現する松田ーー幅のある芝居で客席の隅々を魅了する二人が、ストーリーをしっかりと牽引する。ドジを踏みがちながらも懸命に立ち回るシンシアの健気さからも目が離せず、毒気たっぷりなあだ名を付けるお茶目な一面も楽しい。

物語の綿密さはもちろん、登場人物たちも一筋縄ではいかない。注目を浴びることを極端に嫌う内気なベントー(伊万里有)も次第に深く物語へ関わり始めていく。

柔らかな物腰がダンディーさを醸し出すのはペイトン(神永圭佑)。クールで一見不愛想なアーシュラ高柳明音)を婚約者として思いやる関係性も気になるところだ。

ほかにも、ミステリマニアを体現したポロット(伊藤裕一)、とびきり気の強い女性・エヴリン(西丸優子)をこよなく愛するビクトール(大村わたる)、知的で好奇心旺盛なワイズナー(竹井亮介)と強烈な個性が入り乱れる。ブラント(粟根まこと)はユーモアたっぷりにいじられつつも、時折のぞかせる鋭い眼光でシリアスな空気を流し込んでくる。

やり直したい過去を抱えた登場人物。全員が勢ぞろいするシーンでは、どこに視線を送るか迷うほど端から端まで緻密に作り上げられている。後半の怒涛の展開、特にラストの約10分は瞬きするのも惜しいほど見入ってしまうだろう。物語の完結を見届けた後、答え合わせの解説を行う感覚でもう一度観劇したくなるはずだ。平日公演ではキャストによるアフタートークショーも催される。ぜひ、本格ミステリの世界を肌で感じていただきたい。

取材・文・撮影=潮田茗



(出典 news.nicovideo.jp)


<このニュースへのネットの反応>